Soap Bubble Wiki
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【はじめに】[]

*このページは、私がこのウェブサイト(Soap Bubble wiki)で学んだBubblingの基礎を、日本固有の事情に合わせて、これからBubblingを始める日本人の初心者バブラーの方向けに抜粋したものです。(私見が多分に含まれており、必ずしもSoap Bubble wiki全体の見解を代表するわけではありません。)

*各項目にはSoap Bubble wiki本文へのリンクがありますので、是非読んでみてください。どのブラウザにも翻訳機能が付いています。翻訳機能を使えば誰でも十分に読み取れる内容です。

*全てのシャボン玉遊びは自己責任です。材料や液などは幼児の手の届かない場所に厳封・施錠するなどして厳重に保管しましょう。

【シャボン液の構成要素】[]

シャボン液を自作する際の主な素材は、

食器用洗剤(界面活性剤)

ポリマー

の3つです。この3つが三大要素です(オプションとしてph調整剤が加わる場合もあります)。これらの材料を調合してシャボン液を作成します。

「水」はシャボン玉の本体、主材です。「食器用洗剤」は水のカタマリを膜状に薄く、広く、長く引き伸ばす役目を持つと思ってください。「ポリマー」はシャボン玉の分裂しやすさ、膜の閉じやすさ、膜面の破綻を回避する能力(自己修復力)に関わります。

【水】[]

シャボン玉の膜のほとんどはでできています。当然、シャボン液の体積の大部分も水が占めることになります。

どういう水を使うかについてですが、精製水(特に蒸留水)を推奨するレシピもあれば、雨水を推奨するレシピもあります。昔から伝わるシャボン液の作り方には、それらの水を使うよう指示されているケースが多いです。おそらく水中の不純物(カルシウムなど)を排除したほうが良いという発想だと思います。ただ、現代の多くのBubblerは、水道水を使っている人が大多数です。

現在の多くのBubblerが水道水を使用していることについては、蓋然性が高いと思われる理由(ないしは仮説)が二つほど挙げられます。一つには、シャボン玉に使われる材料(界面活性剤)の変遷が関わっています。

蒸留水などを使うことが盛んに推奨されていた時代というのは、まだシャボン液に純粋な「石鹸」が使われていた頃です。石鹸の成分はカルシウムやマグネシウムと反応し、液中に消泡作用のある石鹸カスを作ります(衣類用洗剤には、過度な泡立ちを防ぐ消泡材として敢えて石鹸成分を配合しているものもあります)。泡立ちを低下させる石鹸カスの発生を防ぐには、カルシウムなどのミネラルを取り除いた蒸留水等を使う必要がありました。しかし現代のバブル液は、石鹸カスをほとんど作らない「合成洗剤系の食器用洗剤」を使用することが多いため、蒸留水等を使用するメリットは以前ほど感じられなくなっています。用意するのが面倒な蒸留水や雨水をわざわざ使わなきゃいけない理由が無くなってきた、ということです。

もう一つ挙げるならば、それは食器用洗剤自体の設計によるものです。

複数のBubblerが、蒸留水と水道水では有意な差異はほとんど生じず、むしろ水道水の方が良い結果を出すと報告しています。明確な理由が解明されているわけではありませんが、これを説明付けるとすれば次のようなことが考えられます。現代の食器用洗剤は、企業が消費者のニーズに適合するようマーケティング調査やモニターテストを繰り返して完成した商品ですから、各家庭の炊事場の「現実」を志向したものになります。当然ながら、各メーカーは蒸留した水や雨水ではなく、一般的な水道水を使ったときに、最大限の能力を発揮するように商品設計しているはずです。つまり各地域で販売されている食器用洗剤は、各地域ごとの水道水(その国や地域の水道水の硬度、平均的なph値、平均的な残留物量...)を使ったときに、最高のパフォーマンスを発揮するように設計されている、ということです。そう考えれば、少なくとも食器用洗剤を使って泡を出すというのであれば、水道水が最も適している、というのは当たり前というわけです。

それでも、蒸留水や精製水を使うメリットがある人々もいます。例えば一部のステージパフォーマーの方がそうです。水道水は実際のところ、国や地域によって(時には同じ場所でも偶発的に)硬度やph値が変化します。ステージパフォーマーは予め考えておいた演目のシークエンスをやり遂げるために、常に一貫した結果を生む安定性の高いシャボン液を用意しなければなりません。特に欧米など国や州をまたいで活動するパフォーマーの場合は、どの地域で入手しても同じ性質である蒸留水を好む人々が一定数存在します。それ以外では、教育・研究機関などで行われるシャボン玉を使った化学実験の際にも、条件の一貫性を保証してくれる蒸留水が使われます。また、石鹸成分が配合されているナチュラル系の食器用洗剤を使う場合は、石鹸カスの原因になるカルシウムなどを除いた蒸留水の方が良いということになります。

蒸留水と水道水を混ぜながら調整して最適なポイントを探るのは良い方法かもしれませんが、実際のところ日本国内で、そこまでやってどの程度性能が向上するのかは定かではありません(このあたりは人それぞれの信念によると思います)。

【食器用洗剤(界面活性剤)】[]

水がシャボン玉の主材だとすると、界面活性剤はシャボン玉の支材です。水が膜を成して球形を形作り、空中に浮遊することができるのは、界面活性剤の作用によるものです。界面活性剤の基本的な性質については、既にネット上に優れた解説が多く存在しますので調べてみてください。シャボン膜は、水の分子の層を、2つの界面活性剤の層がサンドイッチする形で保たれています。

現在、日本を含め世界中のほとんどのBubblerは、界面活性剤を合成洗剤から、特に「食器用洗剤」から得ています。石鹸、ハンドソープ、シャンプー等でもできないことはありませんが、シャボン玉を作る能力という点では食器用洗剤が最も適しています。衣料用の洗濯洗剤などには泡調整剤(消泡剤)が含まれており、シャボン玉には向いていません。

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左から チャーミーマジカプロフェッショナル(ライオン)、前列よりキュキュット(花王)、チャーミーマジカ(ライオン)、JOY(P&G)、パルモリーブ(コルゲートパルモリーブ)、Dawn Ultra(P&G)、Dawn Platinum(P&G)、後列左からパフォーミィ(花王)、Dawn Professional /lemon(P&G)、Dawn Professional /original(P&G)

食器用洗剤の中でも、使えるものと使えないものがあります。多くの日本人Bubblerに支持されているのは、花王のキュキュット(マスカット/オレンジ/グレープフルーツの香り)、もしくはライオンのチャーミーマジカ(除菌+/酵素+)です。P&GのJOYでもできますが、割れた際に被膜の残骸が発生し飛び散ることがあります。海外ではP&GのDawnシリーズが最もスタンダードな洗剤です。ダイソーのコンパクト洗剤(2022年現在販売されているもの)はほとんど使えません。

業者向けに販売されているような業務用濃縮洗剤の中には界面活性剤率が50%を超えるものもありますが、私が知る限りそれらでキュキュットやマジカを超えるような良い結果が出たことはありません。業務用・業者用と銘打った大きい容器の洗剤は、ほとんどの場合は市販品より強力なわけではなく、大量に消費する調理現場のために廉価版として作られた商品であり、精妙に設計されたキュキュットやチャーミーマジカに比べると泡立ちの良さなど性能面で劣る場合がほとんどです。商品の裏面に書いてある界面活性剤率は一つの目安にはなります(低すぎるものは効果を期待できません)が、食器用洗剤の性能の優劣は、どちらかというと%の数値よりは、使用されている成分そのもののの違いによって大きく左右されるようです。

特に日本では「界面活性剤率が40%以上のもの(または30%以上のもの)を使うと良い」というアドバイスが良く知られていますが、これについては根拠が無いと断言して良いと思います。30~40%以上の洗剤でも非常に効力の低い洗剤がたくさんあります。結局Bubblingに使えるような強い効力のある食器用洗剤は、%の数字に関係無く、特定の数種類(特定の界面活性剤を特定の配合比率に基づいて使用している洗剤)に限られます。

自社で高度な研究設備を有する花王、ライオン、P&Gは、いずれもキーとなる界面活性剤を独自に開発し、自社の製品に使用しています(製造方法やCAS 番号は企業秘密扱いです)。例えば、キュキュットの泡立ちの良さにとって重要な成分であろうと推測される「ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム」は、花王キュキュット以外の洗剤ではまずお目にかからない、かなり独特の成分です。一方、100均など安い洗剤や業者向けの大容量高濃縮洗剤の多くは、価格を抑えるため、化成企業がメーカーに販売する一般的な原料を使用しています(メジャー製品ではもうあまり使われない直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど、旧世代の界面活性剤を使っていたりします)。シャボン液の材料としてみた場合、両者の性能は雲泥の差と言っていいと思います。後者を使った場合、良好な結果を得た経験は私にはありません。食器洗いの性能と、シャボン液としての性能は、ある程度比例しているのではなかろうかと想像しています。

シャボン玉には「直観に反する事実」が色々とありますが、食器用洗剤の作用もその一つです。「シャボン液の濃厚さ」と「シャボン玉の頑丈さ」の関係は、ほとんどの人が想定しているものとは真逆です。素朴な考え方として、「何か材料を加えればその分シャボン玉はパワーアップするはずだ」という思い込みがありますが、食器用洗剤に関してはそうとは限りません。「理由は分からないがシャボン玉が割れやすい」という時に、なんとかしようと思って洗剤を注ぎ足すと、ますます状況が悪化することもあります。

洗剤の割合を増やす(=水の割合を減らす)と、シャボン玉の膜の厚さは薄くなっていきます。それはつまり、より薄く、より広く、大きく伸びるようになるということです(パン生地を麺棒で薄く伸ばしていく様子を想像してください)。結果としてシャボン玉のサイズは大きくなります(ガーランドワンドを使う場合は玉の数が多くなります)が、膜が薄くなる分、風圧や乾燥蒸発により割れやすくなる(寿命が短くなる)結果になります。

洗剤の割合を減らす(=水の割合を増やす)と、シャボン玉の膜の厚さは分厚くなっていきます。膜が分厚くなる分、風圧や乾燥蒸発に対し強くなり割れにくくなりますが、膜が硬く伸びないため、大きくなりにくく(伸びにくく)なります。寿命を延ばすことができますが、大きく膨らまそうとするとある程度のところで割れるようになります。

シャボン玉の「サイズの大きさ」と「寿命の長さ」はトレードオフの関係です。どちらかを取ろうとすれば、もう片方が犠牲になります。例えば、気温が高く乾燥している日は、飛ばしたシャボン玉の寿命が数秒程度しか保たないことがありますが、そういうときは水を足すと、サイズが小さくなる代わりに寿命を延ばす結果に繋がります。

膜の厚さが適正かどうかを把握するには、シャボン玉の色を観察することが必要です。シャボン膜の色は、膜の厚さと正確にリンクしています。詳細は別項を参照してください。

【ポリマー】[]

ポリマー(慣例的にBubblerたちは高分子化合物からなるさまざまな添加物を総称してそう呼びます)」は、現代のBubblerたちのパフォーマンスにとって欠かすことのできない材料です。直径1~2mの巨大なシャボン玉を作ったり、数えきれないくらいの大量のシャボン玉を一瞬で作ったりするには、ポリマーの作用が不可欠です。シャボン玉の材料として使用できるのは、水溶性のポリマーだけです。水に溶けないものは使えません。

シャボン玉の材料として使えるポリマーにはいくつかの種類があり、それぞれに特性があります。どのポリマーが最も優れているか、どのレシピが最も優れているかという点については、異なる見解が山ほどあります。

ポリマーもピンキリですから、明らかに効力の低いものもあれば、一目で判るほど強い効力を有するものもあります。下記に列挙されているポリマーはいずれもwikiのBubblerたちによってその効力が確認されている、折り紙付きのポリマーです。少なくともこれらの第一線のポジションにあるポリマーたちに関しては、個人的には、ポリマーそれ自体の性能の差みたいなものは感じられません。また「どっちがより優れてるのか」といった議論にはあまり意義がないと思います。往々にしてポリマーの違い(レシピの違い)は、Bubblerが何を重視するのかによってその評価が異なります。調合の際に注意やコツが必要なもの(0.1g単位での計測が必要なものだったり、長時間の攪拌が必要なものなど)は苦手だという人もいるでしょうし、ある程度の粘度が無いと気持ち的に安心できないと感じる人もいます。労力を費やした液のほうが思い入れができるという人もいますし、手軽さこそが最重要ポイントだと言う人もいます。液の優劣の判断は、その性能によってだけでなく、どこで何に使うのか(ステージ上なのか、屋外イベントなのか、子ども向け化学教室なのか、どの季節のどの時間帯に使うのか、どのような素材のワンドやフープで使うのか...)によっても異なります。実際のところ、ポリマーやレシピの優劣について語る人の多くは、そういった細かい「個別的な事情」がベースにあるにも関わらず、ざっくりとした感覚のみで比較論を語っている、というようなケースがほとんどではないかと感じます。

経験を積んでいけば、調合のコツや調子が悪い時の対処法を掴んで「これなら安定して使える」と感じられるポリマーやレシピが見つかるはずです。それがあなたにとっての「お気に入り」です。以下には代表的なポリマーを列挙しています。是非お気に入りのポリマーやレシピを見つけてください。

いろいろなポリマーを経験してみることは良いことだと思います。海外の三大メジャーを挙げるとすれば、「グアーガム」「PEO」「HEC」の三つです。日本国内では以前から「洗濯のり」が使われていましたが、2010年代中頃から次世代のポリマーとして「ポリアクリル酸ナトリウム」が注目を集め、現在では最もメジャーなポリマーとなっています。「こんにゃく」「タラガム」「フェヌグリークガム」は、私が検証した結果、強力な効果を確認することできたポリマーです。

グアーガム[]

グアーガムパウダーは、天然高分子化合物(ガラクトマンナン)が主成分です。グアー豆の胚乳部分をすり潰して得られる粉末で、食品添加物や化粧品原料として主に増粘を目的に使われます。欧米では一般的な食料品(健康食品)として店頭で販売されています。日本国内では店頭で見かけることはまずありませんが、Amazon.co.jp等のネット通販で簡単に入手できます。(例:marugo社のグアーガムhttps://amzn.to/3WgEIj7

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グアーガム(marugo製)

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グアーガム(NowFoods製)

水1ℓに対し0.5g~3.0g程度の使用で十分な効力を発揮します。調合後時間が経つにつれ徐々に粘性を発現しますが、PEOやポリアクリル酸ナトリウムのようなネバついた粘液にはなりません。液の粘性を上げすぎないというのは利点と考えるべきで、そのおかげで多少の量の誤差には寛容ですので、グラム単位の計量はせずに、一般的な調理用計量スプーン(小さじ)で計って調合しても、毎回安定した出来具合のシャボン液を調合できます。グアーガムは完全な水溶に時間がかかるようです。半日程度寝かせれば確実だと思います(私の場合は前日の夜に作っておいて翌日の日中に使います)。

得られるシャボン液の性能は間違いなくワールドレベルで、世界中のBubblerによって効果が確認されており、多くのプロのパフォーマーに愛用されています。調合のしやすさという点でも、性能の高さという点でも、初心者からベテランまで幅広くお勧めできるポリマーです。 グアーガムの詳細についてはこちらを参照してください→ https://soapbubble.fandom.com/wiki/Guar_Gum

PEO[]

PEOはポリエチレンオキシドの略で、合成高分子化合物です。水に溶かすとわずかな量でかなり強い粘性を発現します。また、他のポリマーにはない強い糸曳きを伴うことも特徴です。PEOには様々なグレードが存在しますが、シャボン液にとって有益なのは分子量の高いものです。Bubblerが好んで使うPEO商品としては「J-lube」またはPolyOxシリーズの「WSR301」が有名ですが、日本国内で入手するとすればほぼJ-lube一択です。畜産業者向けの業務用品(大型家畜の助産用潤滑剤)として流通しており、店頭で見かけることはありませんが、楽天市場やAmazon.co.jp等のネット通販で入手できます(2022/10現在) 。WSR301はebayまたは米国のオンラインショップなどから個人輸入で入手できます。

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J-Lube

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J-lubeは全体量の1/4がPEOで、残り3/4はショ糖です。WSR301は100%PEOです。したがって、単純に考えてJ-lubeの場合はWSR301の4倍の量を使用すれば、WSR301と同じ量のPEOを使用することになります。同量のPEOの量になるように使用した場合は、両者とも同等の効能と考えて差し支えありません。PEOの難点は、調合する際の扱いが難しいことです。かなり強力なポリマーなので、入れ過ぎてしまうと液が台無しになります。例えばWSR301は0.1g前後の誤差でも甚大な影響が出てしまうため、毎回安定した液の調合をしようとするならば、0.01gまで計れる精密スケールを使用して厳密に計量する必要があります。その点、J-lubeはショ糖で希釈されているので、WSR301に比べると計量は簡単になります。PEOを使ってみたいという方には、入手しやすさの点でも、調合のしやすさの点でも、最初はJ-lubeをお勧めします。

他のポリマーとの違いとして、PEOはワンドの紐から液が流れ出る際の「スムーズさ」に関与している可能性があります。「自己サイフォン」という現象(こちらを参照)がありますが、PEO粘液は特に強力な自己サイフォンを再現できるため、長鎖ポリマー固有の特性を示す実験見本としてたびたび使用されます。そうしたPEOの特異な性質は、巨大なシャボン膜をワンド紐からスムーズに引っ張り出す効果を想像させるに十分なものです。過去のギネスチャレンジに使われたシャボン液に度々PEOが使用されていることからも、世界中の多くのBubblerたちに厚く信頼されていることが伺えます。 PEOの詳細についてはこちらを参照してください→ https://soapbubble.fandom.com/wiki/PEO

HEC[]

HECはヒドロキシエチルセルロースの略で、天然のセルロースに化学的な処理を施した半合成高分子化合物です。様々なグレードのHEC製品が存在しますが、シャボン液にとって有益なのは分子量の高い製品です。現在入手できる代表的な製品はNatrosol社の250HHRなどです。HECに関してはメジャーな通販サイトでは入手できません。化粧品のDIYの原材料として個人向けに販売されているHECの純粉末をebayまたは海外のオンラインショップなどから個人輸入することで入手できます。

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HEC Natrosol250HHR

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HEC (低粘度)

HECは調合に特別な手順が要ります。他のポリマーのように混ぜ合わせて放置すると、底の方から成分が凝固し沈殿物ができます。これを防ぐには、40分ほど定期的な攪拌を続けること(4分放置し、1分間手動でかき混ぜる。これを8回繰り返す。マグネティックスターラーがあれば40分間攪拌し続ける)が必要です。調合する方法としてはスラリー法での混合(Cold mix)も可能ですが、このwikiで紹介されている確実な混合方法は熱湯混合法(Hot mix)で、これには熱湯と、融解トリガーとしての重曹が必要です。

糸曳きがなく、粘性もそこそこでありながらPEOやグアーガムに比肩する性能を発揮します。海外で販売されている多くの既成シャボン液製品にはHECが広く使用されており、専門の業者から見ても有効性の高いポリマーとして評価されているようです。このサイトの創始者は、HECのシャボン液で印象的な巨大シャボン玉をいくつも記録しています。他に比べるとハードルが高いポリマーですが、機会があれば是非試してみてください。 HECの詳細についてはこちらを参照してください→ https://soapbubble.fandom.com/wiki/HEC

洗濯のり[]

全国の100均ショップやドラッグストアで購入できます。以前から日本国内ではよく知られたシャボン液の材料として、子どもの遊びや理科の実験に使われてきたので、知っている方も多いのではないかと思います。

シャボン液の性能向上に関与しているのは洗濯のりに含まれるPVA(ポリビニルアルコール)だと考えられてきましたが、wikiのメンバーの報告によれば、どうやら純粋なPVAのみを配合した場合だと、なかなか良い結果に繋がらないようです。PVAに加え、洗濯のりに含まれる米由来のでんぷん質との相乗的な効果があるのではないかと推測されています。海外では入手困難なため、日本独特のシャボン材と言えます。

液体なので混ぜやすく、子ども向けのシャボン玉遊びや化学教育に最適ですが、曇天・高湿度・低気温など条件が良い場合、巨大シャボン玉においても素晴らしい効力を発揮します。Oono Hisaoさんは洗濯のりのレシピで見事な巨大シャボン玉をいくつも記録しています。

ポリアクリル酸ナトリウム[]

ポリアクリル酸ナトリウムは高吸水性ポリマーの一種で、身近な生活用品(おむつの吸収剤、保冷剤の中身、ハイドロプランツの保水材など)に使用されています。様々なグレードが存在し、製品によって分子量や粘度が異なります。水溶性のものと非水溶性のものがあり、シャボン液の材料として使えるのは水溶性の商品のみです。水溶性の物は、食品添加物(パンやお菓子の増粘剤)もしくはバスローション(個人用潤滑剤)の材料として粉末状で販売されており、Amazon.co.jpなどネット通販で購入できます。(例:marugo社のポリアクリル酸ナトリウムhttps://amzn.to/3DU0PVu

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ポリアクリル酸ナトリウム(松葉薬品製)

日本ではかなり以前から既成のシャボン液製品の原材料の一つとして使用されてきました。2014年に日本人Bubblerによってその効能が再発見され、それ以後日本のBubblerたちの間で最もメジャーなポリマーになりました。ポリアクリル酸ナトリウムについては、日本が世界で最も盛んな生産国の一つで、日本国内だと入手は簡単ですが、欧米では入手困難です。そういった意味では日本独特のシャボン材と言えます。

一般人が入手できる市販グレードのポリアクリル酸ナトリウムは、水に溶かすと強い粘性を発現しますが、糸曳きはなく、ボタッとした感じの粘液を作ります。PEOが「ネバネバ」「ベトベト」だとすると、ポリアクリル酸ナトリウムは「ヌルヌル」「トロトロ」という感じです。溶解には多少コツが必要です。吸水性が非常に強いので、わずかな湿気に晒されただけでも凝固し始めます。スプーンなどで普通に水に投入するとあっという間に大量のダマを作り、全く溶けません。お湯を攪拌しつつ、粉末を三角折りの紙に乗せて高めの位置からサラサラと振りまくように、時間をかけて少しずつ混ぜ込むとよく溶けます。

適切な量を配合すると他のポリマーと同等の優れた効能を発揮します。特にプラスチックチェーンを使ったガーランドワンドとの相性の良さを感じるBubblerもいます(強い粘性が関係しているかもしれません)が、巨大さを追求するには調合の際に粘性を抑制するためのコントロールが必要です。

こんにゃく[]

こんにゃく粉は、こんにゃく芋を細かく破砕し乾燥させた粉末です。自家製こんにゃくを作るための材料として販売されています。こんにゃく粉の主成分(グルコマンナン)は天然高分子化合物で、これがシャボン液の性能向上に大きく寄与しているものと思われます。こんにゃく粉は楽天市場やAmazon.co.jpで購入できます(例:こんにゃく粉 https://item.rakuten.co.jp/ookahara/10000002/)。

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こんにゃく粉

こんにゃく粉を水に溶かすには、HECと同じように熱湯で40分ほど攪拌し続ける方法があります。また、こんにゃく糊を作る要領で溶かす方法もあります。凝固剤(消石灰など)は使用してはいけません(凝固して本物のこんにゃくになってしまいます)。シャボン材としての検証については、こんにゃく粉自体がアジア諸国以外ではほとんど入手できないので、wikiも含め他のBubblerによる再現報告がほとんどありません。しかし私は、2020年から何度も検証を繰り返した結果、こんにゃく粉が非常に強力なポリマーだと確信しています。

溶液の粘性は低いです。初めてこんにゃく粉を試す方は、水溶液にした段階で「これは失敗だ」と思うでしょう。水溶液の段階では水のようにシャバシャバで、私も最初は、PEOやポリアクリル酸ナトリウムの経験から鑑みるに、これがシャボン液として機能するとはとても思えませんでした。しかしその予想は完全に覆されました(自分の背丈を超える高さの球形シャボン玉を何度も作ることができました)。

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グルコマンナンパウダー

こんにゃくから抽出された純粋なグルコマンナンのパウダーも販売されています(NOW Foods製など)。こんにゃく粉のレシピと同量を使って検証したところ、こんにゃく粉を使用した場合よりも割れやすく、分裂しにくいシャボン玉になります。量を追加すると、こんにゃく粉のシャボン玉と同等の出来になります(この結果は、こんにゃく粉の成分のうちグルコマンナン以外の部分もまた何らかのプラスの効果を生んでいる可能性を示唆しています)。 こんにゃくの詳細についてはこちらを参照してください→ https://soapbubble.fandom.com/wiki/Konjac_(Konnyaku)

タラガム・フェヌグリークガム[]

タラガムフェヌグリークガムは、グアーガムと同じく、天然高分子化合物(ガラクトマンナン)が主成分です。違いはガラクトマンナンを構成するマンノースとガラクトースの比率で、フェヌグリークガムが1:1、グアーガムが2:1、タラガムが3:1です。ガラクトースの比率が高いほど水に溶けやすい性質を持ちます。

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フェヌグリークガム

タラガムとフェヌグリークガムもまた他のBubblerからの検証報告が全く無いポリマーですが、私が検証した限りでは、かなり良く機能するポリマーだと思います(少なくともグアーガムと同レベルで機能します)。特に、特定のレシピで調合するとガーランドワンドで使用したときに素晴らしい能力を発揮します。フェヌグリークガムはスパイスの一種で、キュキュット等でシャボン液を作ったときにシャボン玉がカレーのような匂いになるので注意が必要です。タラガムは無臭です。

その他[]

HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、キサンタンガム、アマニエキス、サゴ澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、各種個人用潤滑剤(KYゼリー、サージルーブ、etc)などが報告されています。良く機能するものもあれば、イマイチなものもあります。台湾では膠(にかわ)がよく使われるようです。欧米では初心者むけにコーンスターチやコーンシロップなどを使ったレシピがありますが、上記のポリマーに比べると効果は低いです。

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Surgilube

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K-Yゼリー

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BubbleVenti(既製品として販売されているポリマー)

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カタツムリムチンパウダー

私が実際に確認した限りで機能しなかった(上手く行かなかった)ものを挙げると、カルボマー、どんぐり粉、キトサン、アカシア食物繊維(アラビアガム)、ポリビニルピロリドンk30、カタツムリムチンパウダー、ニューファストン(義歯安定剤)等です。ポリグルタミン酸も試しましたが顕著なアドバンテージは無く、シャボン液の材料として使うにはコストが高すぎて現実的でないと思います。

他に調べる価値があるとすれば、ラムダカラギナン、ローカストビーンガム、フコダイン、タマリンドガム、水溶性加工澱粉類などが考えられます。これらを試された方は是非結果を教えてください。


【オプション:pH調整剤】[]

特定の食器用洗剤を使用したシャボン液は、その液性(pHの値)を調整することで、性能の向上を図ることができます。例えば、海外で流通するP&G社の食器用洗剤(Dawn、Fairy、Jar、Gainなど)を使用する場合、pH調整はかなり重要な作業となります。 具体的には、「アルカリ性寄りのシャボン液を酸性側に傾け、pH7.5前後ぐらいになるように調整する」という作業になります。 pH調整剤としては、例えば以下のものが挙げられます。

(酸性側に調整するもの) ・クエン酸 ・酒石酸 ・ベーキングパウダー ・重曹とクエン酸の混合粉末

(アルカリ性側に調整するもの) ・重曹

pH値が適正な値(おおよそ7.5前後)に調整された場合、シャボン玉が割れにくく、閉じやすく、長寿命になることが報告されています。 これは界面活性剤の働きが、pHが調整されることによって最大限に効率化された結果だと推測されています。

pH調整がもたらす効果は、2011年頃にSoap Bubble Wikiのメンバーによって確認されました。それまでもクエン酸や重曹を使用する人は存在しましたが、pHの調整がシャボン玉に重大な変化を及ぼしていることが明らかになったのは、Soap Bubble Wikiにおける検証によってのことです。

ただし、現在市販されている日本の食器用洗剤(チャーミーマジカおよびキュキュット)の場合は、例外のようです。チャーミーマジカを用いたシャボン液は、pH7.5前後になるように調整した場合、逆に性能が悪化することが確認されています(こちらを参照)。 またキュキュットは無調整でもpHが7.5前後で安定しており、あえてpH調整剤を加える必要はありません。

よって現在のところ、チャーミーマジカあるいはキュキュットを使用する場合は、pH調整をする必要はありません

特にベーキングパウダーの効能については、日本のBubblerの間で様々な噂が流布されているようですが、それらの中には正確でないものもあります。上記の通り、ベーキングパウダーの効能は「シャボン液のpHを酸性側に調整すること」です。したがって、チャーミーマジカもしくはキュキュットを使用する限りにおいて、ベーキングパウダーがプラスの効果を附与するというようなことは考えにくいです。(もしそのような効果が確認されたなら、是非wikiに投稿してください。)


【調合してみましょう】[]

材料を揃えたら、実際に調合してみましょう。

これから始める方にまず最初にお勧めするのは、入手の簡単さから言って、グアーガムかポリアクリル酸ナトリウムを使用したレシピです。私の場合、特にお勧めしているのはグアーガムのレシピです。グラムで計量せずに、計量カップと計量スプーンで計れますし、性能もバツグンです。こちらを参照して試してみてください。

他にも、このwikiには世界中のBubblerたちによって考案された数多くのレシピが掲載されています。是非チャレンジしてみてください。


Uroshi Pond


*転載や引用の際には、Soap Bubble Wikiからの転載・引用であることを明記してくださいますようお願い致します。

※すべてのシャボン玉に関する行為については自己責任で行ってください。食器用洗剤を使ってシャボン玉を作るような化学教育や遊びは、学校・児童施設・催し等で現在もごく一般的に行われていますが、あくまでも目的外の使用であることを自覚し、あらゆる事故防止策を確保した上で実施してください。

※材料・液・道具等は幼児の手の届かない場所に、厳封または施錠するなどして厳重に保管してください。置きっぱなしにすると誤食・誤飲に繋がる恐れがあります。

※シャボン液を作る際や遊ぶ際は、必ず成人の監理下で行ってください。皮膚や眼の刺激に十分に注意し、液が目や口に入ったりした場合は水で洗うなど適切に対処してください。特に何らかのアレルギーがある方は厳重に注意してください。

*ebayや海外通販サイトの利用は自己責任で行ってください(リンクは掲載しませんが検索すればすぐに見つかります)。基本的に個人輸入には不着などのトラブルが付き物だと思ってください。海外業者とのやり取りや、トラブルの際の保証申請・返金交渉は自分で行う必要があります。Google翻訳などツールを使えば難しくはありません(全く自信のない人にはお勧めしません)。

※その他注意すべき点を別ページに掲載していますので目を通してください。

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